サンデリカと山崎製パン(株)は、昭和女子大学の新講座「加齢制御栄養学」の開設を支援しています。平成17年4月、昭和女子大学は大学院生活機構研究科にヤマザキパン寄付講座「加齢制御栄養学」を設立し、研究を開始しました。
この寄付講座は、平成20年3月までの3年間、「元気で長生き」の実現をテーマに、「加齢制御に関する基礎研究」、「肥満制御に関する研究」、「炭水化物食品の健康への寄与に関する研究」の、主に3つの研究課題に取り組みます。担当教員は、同分野で著名な同大学大学院生活機構研究科特任教授の木村修一先生他が務められます。
今やわが国は世界一の長寿国となり、「日本人の食事」が世界の注目を集める一方で、国内では、65歳以上の高齢者人口はおよそ2567万人(2005年国勢調査より)、5人に1人が65歳以上という高齢化社会に突入しており、寝たきりや認知症など介護を要する高齢者へのケアが社会的な問題となっています。
今後ますます進展する高齢化社会の中で、単なる長寿ではなく「元気で長生き」の実現が求められていると考えます。当社では研究成果を製品開発に取り込むことにより、製品を介してお客様の健康を配慮するとともに高齢者の食生活への対応も図ってまいります。
寄付講座とは、大学における教育研究の豊富化、活性化を図ることを目的として、企業等からの寄付金で「講座」を設置、運営する制度です。
所在地 | 昭和女子大学大学院生活機構研究科内(東京都世田谷区太子堂1-7) |
講座名 | ヤマザキパン寄付講座「加齢制御栄養学」 |
開設期間 | 平成17年4月1日?平成20年3月31日(3年間)〔平成22年3月31日まで2年間継続〕 |
担当教員名 | 昭和女子大学大学院生活機構研究科特任教授 木村修一 助教授1名、研究員2名 他 |
研究内容 | 昭和女子大学大学院生活機構研究科 ヤマザキパン寄付講座「加齢制御栄養学」3つの研究課題 「元気で長生き」の実現 |
加齢の後半より身体機能の低下が起こることはよく知られている。癌をはじめとして疾病が増加するのもそのあらわれといえる。加齢による免疫能の低下も例外ではない。しかし免疫能は栄養条件によって大きく左右されることが分かっている。われわれのこれまでの研究で、制限食(腹八分)は免疫能を上昇させ、化学発癌を抑制することができた。癌の発生を抑制する食品成分についても現在研究中である。
加齢に関する研究は古くから各方面より行われているが、最近の脳に関わるサイエンスの進歩はめざましい。
脳の加齢変化が身体の老化を早める可能性が指摘されている。われわれの研究室でも、加齢変化がその基礎にあると考えられているパーキンソン症のモデルを用いて脳機能の低下を防ぐ食品成分の検討が進んでおり、脳の加齢変化を抑制する食品成分を検索する研究にも力を注ぎたいと考えている。
心臓疾患のリスクの高いメタボリック・シンドロームの日本人に対する診断基準が示され、今注目されているが、その成因として挙げられているのは、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症である。中でも、肥満はその基盤にあるものとして最も重要な共通因子に挙げられている。日本人はアメリカ人のように特大の肥満になっていないので安心と思いがちであるが、肥満度の指標であるボディ・マス・インデックス(BMI)がアメリカ人より低くても、生活習慣病のリスクがアメリカ人並であることがわかってきており、日本人の男性が確実に肥満が増加しているので注意を要する。
一方、日本人の女性の場合は、世界の傾向とは異なり10代20代、30代40代とも肥満が減ってやせが増えている珍しい国となっている。無理なダイエット効果によるものが多いと考えられており、骨量を蓄積しなければならない時期に、栄養欠乏に陥りやすい状態にある女性が多い可能性も考えられ、閉経期を迎える頃には骨粗鬆症予備軍になる可能性が高く、肥満問題の中で日本人女性独特の課題のあることを知る必要がある。
最近の研究によれば、低体重児(生まれたときの体重が低い)は成人になってから肥満になりやすく、メタボリック・シンドロームにかかりやすいと言われている。今後の肥満者の増加が心配であり、日本女性の肥満減少を単純に喜べないのである。日本人は飢餓耐性が強く、カロリー過剰には弱いという遺伝的要因を充分考慮しながら、ストラテジーを検討する必要がある。また、生体リズムが摂食による肥満成立に関与することが報告されており、同じ食事を摂るにしてもどのようなタイミングで食事をするかが重要である。食事のタイミングと運動との組み合わせは、本研究室の重要な課題となっている。
日本人は飢餓には強いが、カロリー過剰には弱いという遺伝的特性により、糖尿病にかかりやすい民族であることがわかってきた。現在、日本では糖尿病患者700万人と予備軍700万ともいわれており、さらに増加の傾向にある。
われわれはこれまでの研究で、炭水化物素材を用いて血糖値上昇を抑える方法、あるいは、摂食のタイミングや運動を組み合わせるなどによる血糖値上昇の抑制方法等を検討し、成果を得つつある。難消化性デンプンその他食品中に含まれる生理活性物質の食品への応用研究、さらにはスポーツフーズの開発なども視野に入れ、より健康的な炭水化物食品の開発の基礎的研究などが現在進行中である。